HARICO TIGER ー 物語 ー

ー Story ー 物語

「HARICO TIGER」は古くから日本に伝わる”張り子の虎”を元に、新しい絵付けを施し現代の息吹を吹き込んだ美術作品です。日本語である「HARICO」の意味は紙で造られた造形物の総称です。五つの色彩 翡翠・橙・紅梅・鉄黒・妖怪 の組み合わせは、虎の”存在感”と”神秘性”を一層際立たせており、個々の要素の絶妙な調和が、虎の力強さ、妖艶さ、可愛いらしさといった象徴的な意味を個性的な絵付けで表現しています。日本の伝統工芸を継承する為にも”張子の虎”を世界中の人々に認知して頂き、末長く文化を繋いでいきたいと思います。伝統的な要素を尊重しつつも、新たなアートの領域へと導いてくれることでしょう。

 

 

 

ー History ー 歴史

「張り子」は、日本の平安時代(西暦710年頃)には存在していたとされています。虎は一日千里を歩む伝説的な生き物で必ず元のねぐらに帰ると言われており、その帰還の安定感が縁起の良さを象徴しました。江戸時代(西暦1603頃)には”張り子の虎”が男児の初節句の贈り物として使われるようになり、この贈り物は虎のように健やかな成長と出世を願う縁起の良い郷土玩具の象徴であったことから今でも初節句のお祝いや人生の新たなスタートにおいて、健康と成功を祈りまた交通安全や厄除けのアイテムとして愛されています。この様に大変人気がある存在の虎は、江戸時代から浮世絵や日本画にも度々登場する動物でありかの有名な葛飾北斎の晩年の肉筆画にも生命力溢れる虎が描かれています。

[ 葛飾北斎 雨中の虎 1849年 ]
(引用元:太田記念美術館HP)
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/collection/list04

その姿はまさに迫りくる勢いを感じさせ、同時に幸運と成功のシンボルでもあります。「HARICO TIGER」は虎の”力強さ”と”妖艶さ”をPOPに表現し、古来からの伝統と現代のアイデアを融合させた存在です。

 

ー Feature ー 特徴

特徴的な「張り子の虎」の造形は全て紙で形成され、物体は中空で形成されています。「張り子の虎」は頭と胴体が金具で繋がっており、頭部に触れると重りの作用でお辞儀をするように上下左右に愛らしく動く所が特徴です。

 

— Tiger shape — 虎の成形

ベースとなる虎の造形方法で特徴的な所は全て紙で作られているということ。”張り子の虎”の製造所の職人により、溶かした紙を型に吹き付け成形、水分が抜けた所で型から取り出し乾燥、それらを虎の形を整え形成していきます。(この製法は古来の張り子の製造方法とは若干異なります)これだけでは強度が足りませんので胡粉(ごふん)にドブ付けし、再度乾燥を繰り返します。この胡粉と呼ばれる材料は貝殻の粉から出来ている天然の顔料で乾燥すると非常に硬くなるので仕上げの材料として日本で広く使われています。「HARICO TIGER」はこの様な幾つもの工程を経てようやく絵付けが出来る状態になります。

 

 

 

ー Design ー 絵付け

「HARICO TIGER」の一部のデザインはピンストライプという手描きの技法を取り入れていて、専用の穂先の長い筆を使い細い線を描いた作品は、クラシックなエレガンスと現代のスタイルの融合です。細かな線が虎の毛並みと躍動感を引き立て、緻密なデザインが虎の威厳を際立たせます。繊細な仕上げは”張り子の虎”の伝統的な要素を尊重しつつ独創的なデザインに仕上げました。また、虎の半身に骨を書いている作品と黒に塗られた作品は虎の力強さと剛毅さを象徴的に表現しています。骨の一部を露出させることで虎の内に秘められた生命力と神秘性を暗示しており、この斬新なアプローチは伝統的な張り子の虎と新たな視点との融合を体現しています。ポップな絵柄の『紅梅』は、若々しいエネルギーと遊び心を醸し出しています。鮮やかな色彩とキャッチーなデザインが融合し、虎のイメージをカラフルでユニークな形で再構築しているので新たな世代に”張り子の虎”の魅力を伝えるための突破口となればと思います。ユニークな妖怪たちを描いた作品は伝統とファンタジーの融合です。虎の姿と中世から日本に伝わる妖怪が組み合わさり神秘的な雰囲気と不思議な魅力を創り出しています。この作品は張り子の虎の本質に異なる次元を加え人々の想像力を刺激します。妖怪と虎が融合した姿は、古き良き伝統と妖怪を通して見えてくる日本人が持つ”心の豊かさ”が交差する領域を表現しています。いにしえよりの日本人の豊かさ、人々の想像力、この不思議な魅力を発見して下さい。

 

 

 

ー From Creator ー 作者より

「HARICO TIGER」は ”張り子の虎”を愛し、その力強さや美しさを新たな形で称えるアートの集大成と位置付けています。色彩・ピンストライプ・骨・POP・レタリング・妖怪の要素が独自の個性を持ちながらも、”張り子の虎”本来の力と魅力を広く伝え、新たな世代に受け継ついでいきたいと言う共通の目的で結びついています。現在に至るまで「HARICO TIGER」の展覧会でも多くの方から新しいアートへの反応を頂きました。これは「HARICO TIGER」が人々に虎の力強さと勇気を思い起こさせ、同時にアートの可能性の広がりを感じさせる事が出来たからではないかと考えます。”張り子の虎”は古来より縁起物やお守りとして大切にされてきましたが「HARICO TIGER」はその伝統を尊重しながらもアートの力で新たな解釈と表現を生み出し現代の感性と共鳴する作品です。「HARICO TIGER」は”張り子の虎”の伝統を称えつつ、新たなる時代の象徴となることを約束します。

JETWRENCH ArtStudio  /  Keiji TAKATA・髙田 恵治